当社は明治18年、鍋や釜などを商う小さな商店として誕生しました。以来130余年の歴史を刻み、現在では建築や土木資材を中心に取り扱う商社として北陸地域、とりわけ富山の発展に貢献しています。企業は、自分たちが生活する地域が発展してこそ成り立ちます。その中で、当社が創業時から大切にしてきたのは、「信用を第一として顧客価値の創造と安定供給に貢献する」ことです。これまでも、そしてこれからもずっと変わらない使命です。
今後も人々の生活になくてはならない商材を通して、お客様から求められる機能、役割の提供を行うことで地域社会に貢献し続けることが、河上金物の存在意義であり未来につながる戦略だと考えています。
今、私たちは将来の予測が困難な混沌とした社会・経済環境の中を生きています。先の読めない時代だからこそ、常に立ち返る場所を用意しておくことがとても大切だと考えています。今日、当社があるのは、もちろん当社を信頼し、取引をしてくださるお客様のおかげです。そしてその信頼を作ってきたのは間違いなく創業から130余年の歴史を紡いできた先人たちの誠実さです。つまり、そうした誠実さの継承、言わば河上金物にとって「当たり前のことを当たり前に実践する」ことの継承が、まずは大きな軸として必要となります。
もうひとつは、新しい時代に即した守るべき大切なこと、つまりルールの言語化です。「見える化」といってもいいでしょう。もちろん先に述べた「当たり前」の言語化も必要です。近代日本の黎明期である明治に創業し、大正、昭和、平成と時代が目まぐるしく移りゆく中、その時々の「いま」に即して、ルールは常に書き換えられてきたはずです。そして今、令和の時代を迎え、次の100年も見据えて、新しくルールブックを上書きしていかなければなりません。この「いま」に即したルールブックを、社員全員が主体的に「かたち」にしていくことが当社の喫緊の課題でもあります。
「和をもって貴しと為す」という言葉があります。これは、聖徳太子が十七条憲法の第一条で掲げたものであることはみなさんもご存知でしょう。「何事も、人々が争いを起こさず、仲良くするのがいい」という意味で知られていると思いますが、この言葉にはもうひとつ大切な意味が込められています。それは「物事は独断で行わず、特に大事を決める場合は立場や役職に関係なく皆としっかり議論しなさい」ということです。私は、これをしっかりと実践していきたいと考えています。ルールは、たとえ社長といえども独断専行で作ることはできません。理想の会社を作るために大切なことは、肩書や立場、部署といった社内の枠組みや、性差、年齢などを超えて皆が真剣に議論しなければなりません。例えばそれは「女性の働きやすい環境づくり」や「働きがいのある職場づくり」というかたちになるかもしれません。
会社の未来を作るということは、社員自身の未来を作ることです。それを全員が自覚し、自分のこととして真剣になることができる。それが、私が考える「いま」に即したルールづくりです。そしてそれは、私が実現したい社員のアイディアを会社経営に徹底的に生かしていく、社員と共に創る「共創型組織」の実現にもつながっていきます。
モノづくりの会社ではない当社の生命線はヒトづくりです。商社で働く人間には、人と人、人ともの、人と現場をつなぐために、個々の「人間力」を高め続けていく必要があります。人間力というと少し難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、実践すべきことは人として当たり前のことを当たり前にやる「凡事徹底」に留めず、当たり前のことを人並み外れたレベルまでやり続ける、いわゆる「凡事一流」の生き方を貫いていくことだと私は考えています。相手を思いやる行動や、人を尊重する言動、高い倫理観に基づいた判断といった「あたりまえ」を、むしろ「ありがたい」ことだと素直に表現していくこと。その上で、人として恥ずることのない動機に基づいて自分の行動を選択し、あきらめず粘り強く一所懸命に未来を切り拓くことが、結果として個々の「人間力」を高めていくことにつながるのだと思います。
未来は自分の力でしか創り上げていくことはできません。人間力溢れる社員がいきいきと活躍する「共創型組織」の実現を目指して、共に実践して参りましょう。
CLOSE